転生先は赤ちゃんでした

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転生先は赤ちゃんでした

 5000年前、この世界を創造し、あらゆる種族を作った創成神たる星神ティアートは死ぬ間際に五体の龍神を創り出した。    彼らはその役目から世界の守り神として崇められ、衝突し、彼らもまた戦いの果てにその存在は伝説として世界の記憶から薄れていったのだった。    ◆    時はさらに流れ――。    ティアートの死後4000年後、破壊者たる『壊滅』の龍神の生まれ変わりとなった魔王が魔族を率いて人族に戦争を仕掛けた。    これを同じく守護者たる『存護』の龍神の生まれ変わりだった勇者が迎え撃ち、死闘の末に魔王は討ちとられたのだった。    神魔戦争。    大陸を割るほどの激闘の結果、人間側が魔族に勝利し、勇者は後に大国の王となって人々に崇められたのだった。 ◆     漆黒の闇の中、ボンヤリしていた意識が覚醒する。   『くく、勇者め。この俺を倒したと思ったか? 輪廻の技を極めた俺は何度でも蘇るのだ!』    オリジナルの肉体は滅んだが、今頃は予備で作っておいたホムンクルスに魂が転移しているはず。    オリジナルの身体には劣るが、この際仕方あるまい。    劣化しているとは言え、疲弊した勇者を倒すのは難しくあるまい。    さぁ、戦争再開だ!    人間どもに絶望を!   「おぎゃぁー! おぎゃぁー!」    目覚めた俺が最初に目にしたのは見慣れぬ天井と、むっちりとして短い手だった。   「まぁ、生まれましたわ! 王妃様! 国王陛下! 男の子です!」    生まれた?    まさか、ホムンクルスに転生できていない?    おいおい……。    これはどう見ても?    俺は立つことすらできない短い手足をバタつかせて見た。    ふむ……これはどう見ても人間の赤子とやらだな。    ………なんでじゃ!?    何をどう狂って魔王の俺が人間に転生せにゃならんのだ!?    しかも、赤子に!!    くっ!    どこで輪廻の技がおかしくなったのだ!?   「よかった……。よく顔を見せ……」 「おお! でかした! さぁ、我が子の顔は……」    色めきだって俺の顔を覗き込んだ父親? と母親? らしき2人は俺の顔を見た瞬間に絶句した。    なんだ? 可愛すぎて言葉もないのか?    ふっ、人間の親というのは子供を無条件に愛すると言う。    存分に愛でるがいい!    などと俺はサービスと手足をパタパタさせて愛くるしさを出した。    ……いや、これでは犬ではないか!    落ち着け!    未だに混乱してるらしい。    しかし、両親?の次の反応にますます俺は困惑した。   「なんだこれは!?」 「この様な子、わが子ではありません!」    なんだ?    明らかに俺を見て怯えだしたぞ?   「紅い瞳だと!?」 「まるで化け物! これでは魔族ではないですか!」    ふむ。    魔族は漏れなく瞳が紅い。    魔族の共通する特徴だった。    どうやら人間に転生してしまったらしいが、魔族としての特徴は出ていたらしい。    俺って角とか翼とかもなかったからな。    魔族の特徴と言えば紅い瞳だけだったのだ。    そこだけはちゃんとしているとは、やるな、赤子よ。    だが、ここで紅い目が発現しているのはとても困る。    何せ、今の俺は赤子だし。    たぶん、めちゃ弱い……と思う。    肉体の弱さは言わずもがなだ。    無防備のまま床に叩きつけられただけでも死ぬと思う。   「この様な化け物はわが子ではありません! 即刻追放なさい!」 「牙の森に今すぐ捨ててくるのだ! この様な悪魔もどきを人目に晒せるか! 第一子は流産だと伝えよ!」    なにそれ酷い!    せっかく生まれた赤子が紅い目だっただけで捨てるなんて!    ていうか、森に生まれたばかりの赤子を捨てるか!?    それ実質殺してこい、と言ってる様なもんじゃねぇか!?    血を見たくないから捨てるつもりか!   (ふざけるな! 貴様らそれでも人間か! 魔族でもその様なことはせぬぞ!) 「おぎゃ! おぎゃぁー! おぎゃぁー!」    必死に訴えて見たが、泣き声しか出せない。    だが、ここで念話でも使おうものなら、本格的に化け物だと討伐されかねない。    この貧弱な身体で大勢の人間を相手にしても勝ち目はない。    くそ!    なんて冷酷な人間どもだ!    その顔は忘れぬぞ!    ぐぬぬ……と心の中で歯噛みする俺は籠に入れられると、さらに人目に付かないように布をかぶされて荷物のように運ばれたのだった。            
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