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「おい、敵はどこだ?」
「……気配がなくなりました」
「まったく……これだから素人は」
警戒した途端、気配が消えたことを答えると正騎士のひとりがため息をついた。
おかしい。さっき確実に敵意を感じたのに。
それから5日かかって、隣国の商業都市ボールンゲンに到着した。
大富豪バゲイラ氏の別邸のひとつの前で馬車は停まった。レイシア嬢は公務が終わるまでこの別邸に逗留する予定となっている。
──まただ。
警備を始めて2日目の朝、まとわりつくような視線を感じたので、あたりを警戒し始めたらすぐに視線が消えた。
お昼ごろにレイシア嬢が、大きな図書館へ向かうことになったので身辺を護衛する。
「お名前は?」
「ミカ・ローレンジュです」
「実は私、悪意探知の魔法が使えるんです」
「──ッ!?」
レイシア嬢が不意にボクへ近づき話しかけ、やはり道中、敵が確認したと教えてくれた。魔法無しで察知したのを買われ、近くで護衛することになった。
✜
「窓にあまり近づかないでください、バゲイラ様」
「でゅふふっ、レイシアちゃんを守る騎士ですヵ……邪魔でゅふね?」
館の3階、暗い部屋の窓からカーテンを閉めたまま、覗いているのに護衛のひとりがこちらの視線に気が付いた。
「アレはかなりの手練れです」
「2倍払うでゅふ」
「……わかりました」
高い金で雇った裏稼業を生業にしている凄腕の男が姿が暗闇に溶け込んで消えたのを見て大富豪バゲイラの口元が歪み、吊り上がった。
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