第一章

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第一章

 静寂な部屋をスマートフォンのアラームが一瞬にして響き渡り、その鳴り響く音で小神野 早代(おかの さよ) は眠りから引き戻された。  まだ眠たそうな目を擦りながら、布団の中からから身を起こし、指先を伸ばしてスマホの画面に触れた。アラームを止めると、彼女は深い一息をついた。 「もう、朝か」  薄暗い部屋を歩み、カーテンを開くとその一瞬で眩い光が差し込み、部屋は一変する。外の世界は青空に包み込まれ、心地よい陽光が穏やかに部屋を照らしている。 一ヶ月ほど前、この街に引っ越してきて一人暮らしを始めた。中学を卒業して遠くの高校に進学することになったのがきっかけだった。そして今日、ついに高校の入学式が迎えられる日だ。  クローゼットを開け、新しい制服を身に纏いながら、少し緊張と期待が入り混じった気持ちを抱えていた。この日を心待ちにしていて、いざその日が来ると胸の高鳴りが止まらなかった。    寝室を後にし、冷たい床の感触が足裏に広がりながらキッチンへと向かう。早代は冷蔵庫から食材を取り手際よく朝食を準備する。  台所に立ち、鍋に水を注ぎ、湯を沸かし始める。  次にワカメと豆腐を包丁で丁寧に切り分け、鍋にワカメを投入する。続いて一旦火を止め、お玉に入れた味噌を溶かす。最後に豆腐を入れて味噌汁が完成した。  食器棚からお椀を取り、味噌汁を入れ、苺ジャムをトーストに塗りテーブルまで持っていき、朝食の準備は終わった。  食器や冷蔵庫から食材を取り出しスムーズに準備をしている様子が新しい生活への対応が着実に進んでいることを感じ取れる。  椅子に座り、両手を合わせて目を閉じ、食材への感謝をする。  「いただきます」  温かいお味噌汁を手に取り、お椀から立ち上がる湯気が彼女の顔を包み込む。一口ずつ、優しく啜りながらその温もりを感じていた。味噌汁の深い味わいが口の中に広がり、心身をほっとさせる。  たっぷりと苺ジャムが塗られたトーストは口の中で甘酸っぱいジャムが溶け合い彼女の舌を喜ばせる。ほんのりと微笑みながら、充実な朝を過ごした。  「ごちそうさまでした」  食事を終えたお椀を流し台に持っていき、スポンジに洗剤をつけ、泡を立てお椀の表面を覆い、食器を丁寧に洗った。  洗い終わった食器は、きれいに水を切られ、丁寧に拭き上げられた。そして、整然と並べられた食器棚の中にしまわれた。  早代は身支度を整え、心に新しい夢と希望を胸に抱きながら、高校へと向かうのだった。  ドアの前に立つと、彼女は深呼吸をして扉の取っ手に手をかけ扉を開けた。  風が軽やかに髪をなで、外の空気は新鮮で清々しく、早代の心をさらに活気づけた。 「いってきまーす」 鍵を取り、しっかりと施錠する。 「いってらっしゃい」
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