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「でも、できますか」
「難しいだろうね。私はもはや伝説だ」
会長の言葉を僕はすんなりと受け入れる。
誰かが言えば鼻につく台詞も、彼女が口にすればただの事実だ。
「だから君にこの話をしたんだよ」
会長は僕の目を見た。
宇宙を詰め込んだような瞳に留められて僕は動けなくなる。
「私が卒業したあと、私の名前が残るものをぜんぶ回収してほしいんだ。そういうのは未来につながってしまうからね。賞状とかトロフィーとか」
「窃盗じゃないですか」
「もともと私のものだよ。返してもらうだけだ」
「そういうもんですか。てか会長の賞状とか学校中にありません?」
「ただのついでだったんだけどなあ」
校内のいたる所にあらゆる形で彼女の名前は掲示されている。うちに入学する生徒ならどこかで必ず彼女の存在を知ることになるだろう。
そんな彼女を消し去るのはかなり骨が折れそうだ。
「まあ無理にとは言わないよ」
「はい無理です」
「君ははっきりしてるね。じゃあこういうのはどうかな」
にやりと比良川星は笑った。
その悪い笑みすらキラキラと輝いて見えるのは僕のバイアスだろうか。
「回収した私の痕跡はぜんぶ君にあげよう。私を消したあと、崇めるなり燃やすなり好きにするといい」
彼女の言葉が頭の中に響く。
その意味を咀嚼して、理解して、息が止まった。
「稀代の生徒会長、比良川星の過去を独り占めだ。悪くはないだろう?」
会長が笑みを深くするのが見えた。僕はようやく息を吐く。
彼女がそんな条件を出すってことは、僕が断らないと知ってるってことだ。
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