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「……ふう」  自室の扉を閉めて息をつく。  僕の名前が書かれた卒業証書やアルバムが入った鞄をベッドに放り投げた。同時に僕自身もベッドの上に身を投げ出す。  高校を卒業して、数日後には大学生か。  天井を見つめながら遠くない未来を想像してみたが、あまり気が乗らなかったのですぐにやめた。  ゆっくりと上体を持ち上げてクローゼットに向かう。ダイヤル錠を外して扉を開くと、変わらぬ輝きがずらりと並んでいた。  数々のトロフィーや賞状を視界に収めながら僕は呟く。 「ほんと、すごいですね」  彼女を表現するにはあまりに陳腐な言葉だ。けれど素直な気持ちだった。 どうだすごいだろう。ほんとすごいですね。  会長はトロフィーや賞状をもらうたびに生徒会室に持ち込んで自慢していた。その様子に半分呆れながらも何度も僕はそう返す。  あの他愛のない日々はなんと輝かしいものだったか。  クローゼットの端に立てかけてあるファイルを手に取る。中には会長の写った写真が一枚ずつ透明なフィルムに保管されている。   彼女の生徒からの人気は絶大なもので、クラスメイトや助っ人に入った部活仲間、僕も含めた生徒会メンバーなど、たくさんの生徒との写真が校内に残されていた。すべて回収するのに一番苦労したものかもしれない。  会長との思い出を奪うのは忍びなかったが、それも本人の望みなのだから止むを得まい。 「……あれ?」  パラパラとページを捲っていた手が、流れるように写真を眺めていた目が、ある一枚を前にして止まった。  これは僕の気のせいかもしれない。けれど一度気付いてしまえば、どうしてもそうとしか見えなくなっていた。 「この会長、眩しいな」
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