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どの写真でも会長は笑っていた。誰とでも楽しそうにピースをする写真ばかりだ。
それでもこの一枚だけ、彼女の笑顔はキラキラと輝いて見えた。
僕の捉え方ひとつだろうと思うけれど、僕のバイアスはそう告げている。
これが会長の本当の笑顔だと。
「どこだ、ここ」
写っている場所は学校ではなかった。
屋外に大きな筒のようなものが置かれ、その後ろに真っ白な建物が建っている。会長と数人の生徒が並んで筒の前に立っていた。
一緒に写っている生徒は確か天文部員だ。天文部にコンテストなんてあっただろうか。
そこでふと僕の頭に浮かぶものがあった。
写真から目を離して並べられたトロフィーや盾をよく見る。
去年会長が卒業してから僕はほとんど毎日彼女の過去を眺めていた。だからこそ気付けたのかもしれない。
──繋がっていく。
鼓動が聞こえた。知らぬ間に張り裂けそうなほど高鳴っている。
けれど同時に、このまま辿ってしまっていいのだろうか、という思いもよぎった。
過去と引き換えに自分を消してほしいという彼女の願いは、過去をあげるから私の未来には関わらないでほしいという意味ではないか。
「……いや」
ふっと口元に笑みが零れる。
僕は今まで何を見てきたんだろう。彼女はそんな殊勝な人じゃない。
もっと圧倒的に力強く、目がくらむほどに眩しい光を放つ星。
それが生徒会長・比良川星だ。
僕はスマートフォンを立ち上げて、地図アプリを開いた。地域を絞って検索をかけるといくつかの場所がヒットする。
順に詳細を確認していくと、そのうちのひとつに見覚えのある風景が現れた。
そうだねえ、と彼女の声が蘇る。
宇宙にでも住もうかな。
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