1.屋上とギャル

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「なにがなんでも鳶尾を見つけ出してついていくしか――」 「えーそれってつまり学校を辞めるってこと? せっかく入学したのにもったいなーい」 「もったいないかどうかは俺が決める――って、お前誰だよ!」  荻は背後から聞こえた女生徒の声に勢いよく振り返る。屋上に人の気配はなかった。  唯一の扉は錆びがひどくて開けるだけで軋む音がするから気づいたはず。じゃあいったいどうやって……と、荻は目に入った光景に言葉を失う。  茶色に染めた髪の毛は胸の辺りで巻き髪にしてある。両目は人形のように不自然に大きな黒色の瞳。口元に当てた手は白く、爪は異様に長い。  赤と白で全ての爪が染められ、爪によっては光沢のある石が散りばめられていた。着ているのは高校指定の紺色のセーラー服。しかしスカートの丈は明らかな校則違反でパンツが見えそうなギリギリのライン。白のルーズソックスは膝の辺りまである。  が、荻が驚いたのは時代錯誤の恰好のせいじゃない。そのルーズソックスの先、本来足があるはずの部分がぼやけて透けていたことだった。 「えー嘘! きみウチのこと見える系? まじ? 超嬉しいんですけどー」
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