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翌日、入学後初めての土曜日ということもあり、授業は半日で終わった。荻はクラスメイトとの会話もそこそこにしてすぐに帰宅する。牡丹はやはり見かけなかった。
「おかえり。で聞きたいことってなんだ?」
家に着くなりリビングで待ち構えていたのは、荻の父親だった。土曜日の昼間に家にいるのは珍しい。リビングから続いているキッチンからは母親が顔を覗かせていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
母親はいつもきっちりとまとめている黒髪を今日はおろしたままだ。父親もスーツではなく、ポロシャツにジーンズ姿で印象がだいぶ変わる。
父親に促されるままダイニングテーブルの向かい側に座ると、母親はカップを3つ乗せた盆を持ってきて父親の隣に座る。コーヒーの湯気が上がるなか、荻はゆっくりと口を開いた。
「変な話を聞くことになるんだけどさ、父さん達が高校生の頃って学校に怪談とかあった?」
「怪談? いや、聞いたことないな。母さんはあるか?」
「そうねぇ……うーん、なかったと思うわ」
「母さんがないというならなかったんだろうな。どんな話なんだ?」
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