1.屋上とギャル

2/17
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
 横山荻(おぎ)はこれから始まる高校生活が楽しくなると思っていない。  高校生活というのは、社会の歯車として生きていく為の基礎を学ぶ教育機関であり、大学に行く為に行かなければいけない場所。  というのが荻の認識だった。家の為に早く社会に出たい荻にとって高校とはスキップできたらいいのにという存在だ。 「は? お前なに言ってんの。これから入学式。鳶尾(いちはつ)は新入生代表だからいなきゃ困る。え……今空港にいる? なんで……『運命の人に会いに行く』って、アホか!!」  あと30分で始まる入学式を前に、荻は姿を見せない幼馴染を呼ぶ為に屋上で電話をかけていた。屋上への階段は強固なフェンスと南京錠で閉ざされていたが、荻にとっては屋上に行くのになんの問題もない。  ただ、フェンスを埋め尽かさんばかりに貼られていたお札の理由はわからなかった。だけどそれは、幼馴染が入学式に来ない問題と比べれば些末なことだった。 「運命の人って夢に出てくる女の子のことなんだろ。『すごくかわいい』? 知るか! とにかくお前が来ないなんて聞いたらおじさんとおばさんがなんて言うか……って、おいっ」  荻の呼びかけは虚しく屋上に響き渡る。幼馴染の鳶尾が海を越えた国へと旅立ってしまった。  新入生代表は首席がやる決まりなので、鳶尾が来ないならば、次席の荻が新入生代表になることがたった今確定した。 「あんの馬鹿!」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!