4.屋上と幽霊

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「そもそも何年前を調べればいいんだよ」  この学校の制服は設立当初から変わらない。つまり制服から牡丹が生きていた年代を割り出すのは不可能。  少しでも手掛かりがあればと思ったけれど、牡丹はなにも覚えていない。しいて言うなら牡丹の使っている言葉と文字。一時期ギャル語とギャル文字が流行った時代もあったはず。  しかしそれだけの情報では新聞で調べるのは限界だった。キーワード検索で試しに高校の名前を入れてみるもヒットはなし。 「そもそも昔の話なら卒業生に伝手があったらいいんだけど……あ、いたわ」  荻はポケットにしまってあるスマホを取り出し、メッセージアプリを呼び出した。 ――明日、聞きたいことがあるんだけど。  シンプルな文を送るとすぐに返信がきた。 ――なんでも聞いて。  荻はスマホをポケットにしまうと、パソコンを閉じて立ち上がる。ぐるりと周囲を見回すが、やはり牡丹の姿はなかった。
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