乱世

1/1
前へ
/1ページ
次へ

乱世

 西部劇の建物、古代中国の建物、中世ヨーロッパの建物。それらがバランスよく混ざり合い、一つの世界とかしていた。バーク。この世界の名前で。国は大きい方から帝国、セントラル、ディラン、魔国、騎士同盟、南国、北国、ライト、東方となっている。本作の舞台となるのは小国のライト。帝国の右側というだけで、右翼を名乗り、帝国へ勝手に臣従している。敵はセントラルと大将のダンテ・ガルバーニは決めていた。ダンテは養子のクロウを溺愛していた。嫡男のブラウンには冷たかった。ブラウンは、剛勇無双で、仲間をなんとも思わないクロウと違い、仲間思いだった。が、なかなか魅力がないのか、真の、心から話せる仲間がいなかった。否、友、が欲しかった。軍師のクラリスが、眉毛をまななかせながら、こちらへ向かってきている。常に仏頂面のクラリスには珍しくないが、とはいえ、ブラウンも無表情が多いのだ。今は、とくに。「どうしたのだ、クラリス。心配になるぞ」「どうしたとは?」「焦っていたぞ」「そうお見えになられましたか。いえ、あの、物見が空から人が飛び降りてきたと」「空から飛び降り? 天界のものか?」「いえ、天使ではございません。人です」「人が空からとは、面白いな。その者、怪我はないか」「いえその、こちらへ落ちて来るようでございます」「ああ、ん? 天井は、ガラス窓か。それでも危ないな」「若もでございます。ガラスごと上から降ってまいりますぞ!」「な!」  アサネは就活を頑張っていた。まともな学校教育を受けておらず、両親も中卒だった。父が高度経済成長期とバブル期を生きていたので、アサネは貧乏でなかったのだが、姉二人が、美術系の高校に入り、一気に家計が火の車となった。そしてアサネは九年習っていた水泳も辞めさせられた。将来は水泳選手と期待されていただけに、アサネは絶望した。そして学校でイジメられ、不登校となり、鬱になり、後から自閉症スペクトラムと診断され、病院通いの日々。姉が就職でき、自分は無職で家に帰ると父から、「仕事してないやつが飯食うんじゃねえ!」といわれ、もう居場所がないと思い詰め、団地の窓から飛び降りた。死ねたと思った。だが生きている。病院か。最低半身不随だろう。  「おい、目を覚ましたぞ」「そうでございますな」アサネは混乱した。「まあ暴れるな。幸いちょっと打撲した程度だ」「あんたらなんだ! ここは病院か?」「病院? クラリス、なんだそれは」「はて、何でございましょうな」「ここは病院じゃない! あんたらも医者じゃない!」「病院というのがわからんが、医者ではないな。ハッハッハッ」「ですな。ハッハッハッ」「何を笑っている!」「まあ暴れるなって」アサネがブラウンに掴みかかろうとしたら、笑いながら、「お前面白いなあ」ブラウンは無邪気にそういった。  アサネはこの世界で生きていかねばならないようだ。筆者はこのあと、アサネがブラウンとともに戦場を駆け回るさまを描こうと思ったが、それは今の世界情勢、アサネに重い苦しみを与えることになるので二人に友情が芽生えるかも読者に委ねることにした。そして前のところを省いた。ただ、二人は異世界で生きている。これは事実である。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加