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歌と振りを
「ほらァ、会場に着くまでちゃんと歌と振りを覚えて」
首領(メロン)は無理やりメロン(首領)に自分のスマホを押し付け、ライブ映像を見せた。
画面では三人組のアイドル『チューし隊』が歌って踊っていた。
「ぬううゥ、なんじゃァこりゃァ。こんな恥ずかしいマネを我輩が出来るか」
メロン(中身は首領のベガ)はふて腐れたようにそっぽを向いた。
「わァーん。やってくれなきゃ泣くから。ワンワン泣くよォ。良いの。首領の格好で泣くんだからァ」
首領は駄々っ子のように泣きマネをした。完全に脅しだ。
メロンならば可愛らしいが厳つい首領のベガが泣きマネをすると不気味だ。
「ぬううゥ、見苦しいだろう。わかったから泣くな」
さすがにメロンも泣く子と地頭には勝てない。諦めて画像を見つめた。
「ねえェッ、ポチ。スマホ貸して」
首領は運転している星優真のスマホを奪うように借りた。
「ど、どうするんですか。ポチじゃなくって星ですけど」
星優真が訊くが首領は唸ったまま、器用に電話番号を押していた。
「ううゥッン、姫ちゃんに電話するのよ。会場に着いたらすぐライブ始められるように」
首領のベガ(メロン)はスマホをスピーカーにした。何度か呼び出し音が鳴り、電話に出た。
『ハイ、もしもし?』姫乃樹アリスの声だ。
「あ、姫ちゃん。メロンちゃんよ」
だが声は渋い首領のモノだ。とてもメロンの声とは思えない。
『ううゥッあなた。マジでメロンなの?』
声だけでは信用できないのだろう。電話の相手が疑うのは当然だ。
「そうよ。メロン星からぶらり途中下車してやってきた。世紀のアイドル蒼井メロン。まだ誰のモノでもありません。ほォら、世界中の男の子はメロンちゃんにメロンメロンよォーーーッ。食らえェ、メロンメロンビーム!」
首領は恥ずかしげもなくメロンメロンビームの振りつけをした。
「なんじゃそりゃァ」
横で見ていたメロン(中身は首領のベガ)は、あ然として絶叫した。
とんでもないキャッチフレーズだ。
厳つい首領の格好でメロンのキャッチフレーズを言うので運転手の星優真もつい笑ってしまった。
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