私の気持ちとそこにいる彼

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私は、小さい頃から体が弱く、学生時代も、 体育は殆ど休んでいた。 社会人になっても、仕事に就けても 体調を崩すことが多くて、長くは続けられなかった。 だからといって家に籠っているのも嫌で、毎日 自転車に乗って、家から十五分くらいの商業施設に行く。 (両親は心配するけれど…) フードコートのテラス席に着き、 携帯で小説を読んだり、音楽を聴いたりする。 ほっとできるひととき。 …だったんだけど。 最近、フードコートの中から、お店の人に 見られている、ような気がする…気のせい…? (思い切って、ちらっ…) モップで掃除をしている、あの人。あの広いフードコートを、 手際よく奇麗にしていく。 真面目そうな人だ。決してイケメン、と いうわけではないけれど… 今日の空はどんよりしている。今にも雨が降りそう。 『あっ…』 巻かれていた屋根が伸びてきた。 そうやって時が過ぎていったある日、テラス席に着いて ふとフードコートを見ると、彼が、こっちを見てた。 『えっ…?』 気づいた彼は、目を逸らして奥に行ってしまった。 そうだよね、しゅん。…?何で今私、 そんなこと思ったんだろう? それから私は、テラスへ行くのを、何度もやめようとした。 でも、できなかった。私、 彼のこと、気になってる?…――― 今日もテラス席にきて、携帯で小説を読む。 時々彼の方を見ながら。その時、 「あっ!…」 自販機で買ったお茶のペットボトルを 手で倒してしまい、テーブルから落ちた。 地面に転がるペットボトルから、 とくとくとお茶が流れ出す。 『どうしよう…』 そう思った次の瞬間、 「大丈夫ですか!」 そう言って、モップを持った彼がテラスへ出てきて 私の方に走ってきた。                                                                  ー終わりー
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