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エピローグ
錆びた鉄のにおい。
仄かに明るい水晶に群がる蛍の燐光を目印に、黒く汚れた素足で地面を歩いていた。
その少年は両手は煤をまぶしたように黒く汚れている。
日頃、日の届かない地下で行う彼の行動を見れば、その理由も一目瞭然だ。
四方を土や岩で囲まれた一本道を、少年は真っ直ぐに歩く。
進みに連れて光は増していき、眩しいほどの光に迎え入れられ、広い空間へ躍り出た。
見渡す限り、あらゆる場所に水晶や鉱石が生えている。
多くの人がピッケルで鉱物を削る。
少年は彼らに目もくれず、奥へと進んでいく。
「おいあんた、ここから先は……」
男は思わず少年を呼び止める。
身なりの整っていない服装に、まだ十代ほどに見える容姿。
少年が進もうとしている場所の恐ろしさを知っている男は、そんな少年を見て止めないわけにはいかなかった。
少年は男の声に耳を傾けず、奥へ進んだ。
「死ぬ気か。あいつ……」
小さくなっていく少年の背中を、男は呆然と見送る。
不安そうに見つめる男は、少年を追いかけようとして足を踏み出すが、ぶるぶると震え、固まる。
そこから先の世界は、男に恐怖を植えつけている。
男は追いかけず、少年の無事を願った。
広い空間を進むと、階段が見えてくる。
階段が下に続き、少年は躊躇うことなく階段を下っていく。
下った先にも広い空間はあり、あの場所以上に鉱物が多く眠っている。だが人の気配はない。
それもそのはず──
「……来た」
地下には魔物が棲んでいる。
少年の体長を上回る圧倒的な巨体。
全身が岩や鉱物で覆われ、硬い外皮を持っている。
人のように両手両足は生え、その腕の一振りは大地に大穴を開けるほどの威力を持つ。
顔らしき部分には目や口と思われる部位も存在し、放たれる雄叫びは空間を揺らす。
相手にすれば命の保証はできない。
それほどに強く、恐ろしい怪物──ゴーレム。
だが少年は一歩も臆することなく、背中に帯刀していた二メートル超えの剣を抜き、ゴーレムの前に立ち塞がった。
「心臓部にはルビー。弱点が宝石部分なのは悲しいが、体内にある程度宝石は溜め込んでんだろ」
ゴーレムは少年に気付き、地を揺らすほどの咆哮を上げる。
大抵の場合、ゴーレムの戦闘開始の合図だ。
「さあ、やろうか」
少年は走り出した。
重く大きい大剣を悠然と振り回す。
その一撃は、ゴーレムの振るった右腕を玉砕した。
腕を砕かれ、ゴーレムは後ろに体勢を崩す。
間隙もないほどの速さで第二撃を振るった少年。
ゴーレムの心臓部にあるルビーはバラバラに砕け散り、と同時にゴーレムの体は砂粒になって崩壊した。
砂粒の山に埋もれているのは、生前ゴーレムが食事として体内に取り込んだ宝石の数々。
あらかじめ用意していた袋の中に宝石を一つ残らず詰めていく。
「さて、帰るか」
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