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THIS IS YOUR LIFE.
幸せな記憶ほど重く辛い、なんてよく言ったもの。ノーテンキに見えるアタシにだってそりゃ辛い過去はあったわ。でも、幸せな記憶は幸せなまま、未来に持っていくのよ。
宝石箱みたいにキラキラ輝くコスメカウンターのセンターに陣取り、彼らによく似合う色をチョイスしていく。
「ここからここまでぜぇ〜んぶ頂戴。領収書は“THE CLUB”で」
新作コスメを両手いっぱいにぶら下げて百貨店を我が物顔で闊歩する瞬間が最高に幸せ。アタシの手で美しくなっていく男たちの変化を見ている瞬間はもっと幸せ。
だから、アンタたちなんてお呼びじゃないのよッ!
『あれ、ヒデちゃん?』
「あら、こんなところで何やってるのよ。あら?その袋ってあのイケオジショコラティエのところのやつじゃない。分かったわ、そのチョコで店の男たちのご機嫌を取ろうって魂胆ね。アタシ、チョコは食べないわよ。アンタと違ってアタシのお肌は繊細なのよ」
『隆二さんが”あ〜ん”してくれても?』
「食べるに決まってるじゃない!指ごと美味しくいただくわ」
『ふふ。それじゃぁビデちゃんの分は隆二さんから渡してもらおうかな』
「隆二、久砂、宗正の3人から言い寄られるってシチュエーションも捨てがたいわね。あ〜お肌のお手入れしなくちゃ、忙しい忙しいッ。ほら、もう買い物終わったんでしょ?さっさと一緒に帰るわよ」
目の前で苦笑いしてるこのコは、アタシがヘアメイクとして務めるホストクラブ”THE CLUB”のスリートップから溺愛されてて、しかも最近隆二と婚約したっていう、いけすかない女だけど、嫌いじゃないわ。調子乗るからそんなこと言ってやらないけど。
「ほら、小娘。その荷物貸しなさい。アンタみたいな細腕に持たせたらせっかくのショコラが落ちて割れるかもしれないじゃない」
『ヒデちゃんったら、なんだかんだ優しいんだから。でも大丈夫でー』
「お黙り小娘!荷物持ってるアンタの隣歩いてたら隆二に何言われるか分かったもんじゃ……」
『……ヒデちゃん…?』
アタシの視線の先にいるのは、懐かしそうに微笑んで小さく手を振っている1人の女。隣には1人の男。
平凡だわ。平凡すぎる横並びね。
アタシは目一杯微笑んでやったの。だって彼女はアタシの親友。10年ぶりの再会だったんだから。
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