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ぞっとした。
幼馴染とは学校が違うのに、朝にはアタシのクラスメイトまでが知ってるんだもの。
一体、この小さなまちのどれだけの人が知っているのかって思った。困惑している両親の顔も浮かんだわ。
もちろん誤魔化した。
けど、苦しかった。
「カミングアウトされた時、1番やっちゃいけないことって分かる?」
『……1番…かは分からないけど、絶対に人に言っちゃいけないと思う。カミングアウトする相手とかタイミングはその人それぞれで、他人が踏み込んじゃいけない気がする…』
「その通り」
勇気を出して話したのに、裏切られた。ペラペラ他人に話すなんて、最大の侮辱で裏切りだわ。
それでその女、心配するように連絡してきたのよ。
“私の学校で噂になってるんだけど、他にも誰かに話してるの?”って。
あれ?もしかしてアタシの勘違い?
話を広めたのは彼女じゃない?誰かがアタシたちの話を聞いていた?
とりあえず話をしようと思って、放課後ファミレスに集合したの。そこそこ混んでて、アタシたちの席の近くにも何人かいたけど、知ってる顔はなかったから、安心して話し始めたのよね。
『彼女は何て?』
広まった噂をどう否定するか作戦を立てるみたいな事を言ってた気がする。
“誰が広めたんだろう”“こんな噂流すなんて最低”“私はヒデキチの味方だから”
そんな事も言ってたかな。
アタシも若かったし、彼女のことは信頼してたから、どこかから話が漏れたんだと思ったの。それか“メイク好きの男子”っていう噂に尾ひれがついて広まっていった感じかなって。
一先ず否定するって話でまとまったところで、男女の学生集団が入ってきてね。その中のちょっと派手目な男が幼馴染を見つけて手を振りながら近づいてきたの。
制服を見て、彼女と同じ学校だってすぐに分かった。
誰?みたいな雰囲気になったから、彼女がアタシを紹介してくれたのよ。
“幼馴染のヒデキチくん”って。
そしたら、それを聞いた男が一瞬考えて、アタシを指差しながら言ったの。
“昨日言ってたオカマってこいつのこと?”って。
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