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オカマよ、オカマ。酷い差別用語だわ。
ほら、普通に生活してたらなかなか聞かない単語でしょ?周りのお客たちもチラチラこっちを見てくるのよ。面白がってその学生集団が言いたい放題言ってくれちゃって。
“えー俺オカマって初めて見た”
“全然普通の男じゃん”
“姉ちゃんのスカート貸してやろうかー?”
“これで男が好きなの?勿体無い”
“キモ”
『そんな……酷い』
「でしょ?でもこんな言葉、アタシの仲間たちも日常的に投げつけられてきた」
お陰で今はだいぶ図太くなったけど。
ううん。図太くならないと自分を守れなかったのかも。
「ちょっとそんな顔しないでよ。哀れにみえる?ぜぇ〜んぜんそんなことないわよ」
『ヒデちゃんが哀れにみえるって?そんなことない。ヒデちゃんはお店のみんなも、お客様もそのスキルで幸せにしてくれる。だから哀れになんてみえない。むしろ、いつも輝いてる』
「あら、生意気にいいこと言ってくれるじゃない」
『やだヒデちゃん、泣かないで』
「泣いてないわよ」
それで続きだけど、アタシ一生懸命誤魔化したの。泣きたくなったし、生きていけないとさえ思ったわ。
揶揄われたのもそうだけど、信頼してた幼馴染の裏の顔を見て、精神的にエグられた。
でもね、アイツらどんどんエスカレートしてね。退屈な田舎に降って湧いたネタだもの。ここぞとばかりに卑しい言葉でアタシを罵ってきた。幼馴染以外、初めて会ったのよ?そんなよくも知らない相手にすごく言ってくるの。
アタシも傷ついたけどだんだんむかついてきちゃって。だって、アタシの事知らない奴らが外野であーだこーだ言ってて、そんなのおかしいって。
黙れ、クソガキってね。
“社会不適合者”
この言葉でアタシキレちゃったのよ。手が出てね、目の前でそいつが転がった。
『殴ったの?』
「そう。でもね、当たらなかった」
『え?』
「アタシじゃない、他のひとが殴ったの」
今思い出してもゾクゾクして全身が粟立つ感覚。
「それが隆二との出会い」
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