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アタシ、2人を探したわ。お礼を言いたかったし、話を聞いて欲しかった。
だけど、地元の人間なのか観光客なのか分からないじゃない。片っ端から聞いて回ったのよ。
あれだけオーラのある2人だもの、みんな振り返って覚えてるわ。
だけどそう簡単に見つからなかった。
アタシの地元には夕陽がとってもきれいな景勝地があるんだけど、夜になるとひっそりして、それはそれでいいのよ。
もしかしたらそこにいるんじゃないかって、なんとなく胸が苦しくなって、行ってみたの。
そしたらビンゴ!隆二がいたのよー!
『そんな暗闇で…』
「失礼ね。電灯くらいあるわよ。だけどその日は月が明るくて。今でもはっきりと覚えてる。月明かりに照らされてタバコを吸ってた隆二のこと。んもぉ、痺れるほどかっこよかったんだからぁ」
アタシ、近くの自販機で缶ジュースを買って、殴られるんじゃないかってドキドキしながら差し出したの。隆二ったら、アタシのこと上から下まで舐めるように見て、その後ジュースを見て笑ったの。
“…いちごミルク…”
だって甘くて好きだったのよ。美味しいから飲んで欲しかったの。でも受け取ってもらえなかった。
アタシ諦めなかったわ。帰れとも言われてないから、強引に隣に座ったの。いちごミルクは隆二の目の前に置いてね。
彼が何も言わないのをいいことに、アタシ、身の上話をしたの。自分の身に起こったこともスラスラ言えた。メイクが好きだってことも。
そしたら彼、“ふ〜ん”ですって。別に特別なことじゃない、至って普通の“ふ〜ん”だった。
今なら分かるわよね。隆二の周りには色々な過去を背負った人がいて、アタシみたいなのは特別な存在じゃなくて、普通のこと。
“俺っておかしい?“
”…俺に何て言ってほしい?“
”ありのまま。気持ち悪いって思う?“
”…別に。個人の自由。他人がとやかく言うことじゃない“
そうよね。これがアタシだもの。誰のためでもなくて、アタシはアタシのために存在してるんだから。
”…ただ“
”え?“
”…言われたくないならトップ取れ。誰にも何も言わせないくらい圧倒的に“
”トップって…何ができるのか…“
”…あるだろ、好きなこと。好きなら極めろ“
メイクのこと言ってるんだと思った。他人に誇れるほど真剣に打ち込んだものは、自信になる。自己肯定感も爆上がりよ。
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