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ほら、アタシってもともとポジティブじゃない。だから次の瞬間には自分が進むべき道を考えてた。ワクワクして胸が高鳴って、目指すべき道が開けた感じがしたの。
アレやって、コレやって、アソコに行って…って、居ても立っても居られないくらい浮き足立つ感覚だった。
それで隆二の方を向いたら、彼、楽しそうに笑ってた。きっと輝くアタシにときめいたのね。
隆二ったら、そのまま立ち上がって歩いていっちゃってね。彼の背中を見てたらなんだか追いかけちゃいけないような気がしたの。
追いかけるなんておこがましいっていうか。
“ねぇ!キミにはどこに行ったら会えるの?”
そう問いかけたアタシに、隆二はなんて答えたと思う?
一瞬だけ振り返って、”…そのうち”ですって!
“そのうち”って何よ!?会えるわけないじゃないって思ったけど、きっと隆二なりのエールだったのよ。テキトーにアタシのことあしらったのかもしれないけど、勝手にそう思うことにしたわ。
だって彼、ちゃんといちごミルク持ってってくれたもの。ありがとうって叫んだら、今度は振り返ることなく缶だけを振ってた。
今でも思い出すわぁ、あの時の光景を。
アタシ、あれは人生のチャンスだったと思うの。それを迷うことなく掴むことを決めた。だからアタシ、メイクを極めることにしたの。外野から何を言われたって気にならなかった。笑っていられるのも今のうちだって。今に見てろよって。
でも、親には迷惑かけたわね。噂のことはもちろん耳に入っていて、だからこそアタシ、自分の言葉でしっかりと言ったの。そしたら、こっちが拍子抜けする位あっさりと「そうなのね。それならこんな田舎から飛び出しなさい。留学でもしたら?」って言ったのよ。
んもぉ、その場で母を抱きしめたわよ。小学生ぶりかしら。なんだか感動しちゃって、号泣よ。
『素敵なお母様だからヒデちゃんのメイクは血が通ってるように見えるんだ』
「あら、ありがとう。小娘もたまにはいいこと言うじゃない。まぁ、実際のところ母は色々言われたと思うわ。だからアタシは絶対に成功してやるって決めたの」
『そっか。ねぇ、その幼馴染のお友達はそれからどうしたの?』
「抹殺してやったわ」
『え!?』
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