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「そう、その『シルヴェーヌとガラスの靴』だ。ただし……」
チャールズ王子はまるでシンディの考えを読んだかのように、彼女がおとぎ話を頭の中で振り返り終わったタイミングで、再び口を開いていた。
「……それは子供向けのおとぎ話ではない。実際にあった出来事を元にした昔話なのだよ」
「嘘でしょう!?」
今夜何度目になるのか、またまたシンディは驚きの声を上げてしまう。
彼女が『シルヴェーヌとガラスの靴』を単なるおとぎ話と思っていたのは、世間一般でそう考えられているから……みたいな理由だけではなかった。彼女なりに「本当の話のはずがない」と判断する根拠がいくつかあるのだ。
目の前のチャールズ王子にも、それを突きつけてみる。
「だって、そんなドラマチックな出来事が現実に起こったら大きな噂になるはずだけど、そんなの聞いたことがないわ。だからたとえ『実際にあった出来事』だとしても、かなり昔々の話でしょう? でも、そんな昔の魔法だったら、野菜の馬車とかガラスの靴とか無理だわ!」
魔法というのは、そこまで万能ではない。彼女自身、少し魔法が使えるからこそ、それを十分理解していた。
しかしチャールズ王子は、ゆっくりと首を横に振ってみせる。
「普通の魔導士ならば、確かに無理だったかもしれない。だから『偉大な魔導士』だったのだよ」
「そんなの屁理屈、こじつけだわ……」
「そもそも理屈云々ではないだろう? その箱に入っているガラスの靴。その存在こそが、あの話が事実だったという、確固たる証拠ではないか!」
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