新天地へ

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 入試は滞りなく終わった。勿論付き添いは無く、一人で首都に行かねばならなかったが、沢渡さんは事前にホテルと新幹線の切符を手配してくれた。取ってくださったホテルはとても綺麗で快適だった。  沢渡さんは仕事が忙しく会えなかったが、到着した夜には無事に着いたかの確認の連絡をくれた。  まるで、沢渡さんが父親のように思えて私は嬉しかった。  そして私は聖歌大学に無事に合格することができたのだった。  沢渡さんに電話で報告すると「君の小論文はとてもよく書けていたと入試担当の先生から聞いたよ」と褒めて貰えた。  三月、私は高校を卒業した。アパートも引き払った。荷物は事前に沢渡さんの家に送った。その引っ越し費用も彼が出してくれた。    そして三月の下旬の休日に所長さんと二人で沢渡さんのお家に来た。所長さんも仕事の都合をつけて付き添いに来てくれたのだった。沢渡さんは駅に車をまわすと言ってくれたが丁重に断った。  私と所長さんは家に到着すると口をあんぐり開けた。    沢渡さんの家は想像以上に大邸宅だった。 「凄い御宅ね」 「はい…」  所長さんが徐ろに門に備え付けてあるインターホンを鳴らした。  私も緊張して応対を待ったのだった。  
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