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恩人の息子
「はい」
応対したのは女性の声だった。
「あの、真宮です」
私が応えると「お待ちください」と声がした。
奥の扉が開き、所長さんと同じぐらいの年齢の女性が現れて門を開けた。
「ようこそいらっしゃいました。|真宮様と…」
「戸上です」所長さんが応えた。
「旦那様がお待ちです。どうぞ」
「はい…」
家政婦さんかな?
私たちは女性に続いて門の中に入った。
中に入ると玄関も広く天井も高かった。
リビングに案内された。リビングダイニングで三十畳はある広さだった。そこのソファに沢渡さんが悠然と座っていた。
沢渡さんは立ち上がると私たちの側まで来た。
「友杏さん、ようこそ我が家へ。遠いところをありがとう」
「いえ、ご厄介になります」
私は頭を下げた。
「戸上さんもお疲れでしょう。どうぞ座ってください」
「ありがとうございます」
私たちは案内された席に座った。
「息子の純を紹介するよ。下村さん、純を呼んできてくれないか?」
沢渡さんも再びソファに座って声を掛けた。
「承知しました」
やはり下村さんと呼ばれた女性は家政婦さんのようだった。
純くんっていうんだ。どんな感じの息子さんなのかな…
私は初めて会う沢渡さんの息子さんに胸がドキドキしたのだった。
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