恩人の息子

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「友杏さんはお前の一つ上だ。この春から大学生になる」 「聖歌大学に行くんだろ?」 「ああ。この子は前に言ったと思うが、純は光洋(こうよう)高校の二年生で今度三年生だ」 「受験生ですね」 「勉強でわからないことがあったら友杏さんに聞くといい」 「そうだな」 「純、友杏さんを部屋に案内してあげなさい」 「わかった。行こう」  純くんが立ち上がり、私に手招きした。 「は、はい」私も立ち上がった。 「じゃ、私はこれで…」  所長さんが失礼しようとしたのを沢渡さんが制止した。 「折角なので夕食もご一緒にいかがですか?」 「いえ、お構いなく」 「もう、用意してしまったんですよ。遠い処まで来てくださったのだからご馳走させてください」 「わかりました。お気遣いありがとうございます」  沢渡のご厚意で、所長さんも夕食まで一緒にいてくれることになった。  私は純くんに連れられて二階に上がった。  二階も広い…廊下も長いな… 「ここがあんたの部屋」  純くんが歩みを止めて、部屋のドアを開けた。 「えっここが?」  私は部屋に入って驚いた。ベッドも机もあり、カーテンやラグは可愛らしい柄だった。 「荷物は下村さんが片付けてくれたよ」 「そうなんですね。凄く素敵です…」  私はキョロキョロしてしまった。 「…友杏ちゃんだっけ」  私は純くんに名前を呼ばれてドキッとしてしまった。 「はい」 「女子高だったんだって?」 「は、はい…」 「敬語はいいよ。俺、年下なんだし」 「わかりま…わかったよ」  純くんは私の顔をじっと見た。  な、何だろう。どこかおかしいかな?  私はまたもやドキマギしてしまった。
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