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「友杏ちゃんって、それ、メイクしてんの?」
メイク?
私は突然聞かれて驚いた。
「ううん、してない」
「ふーん、俺の知ってる女子高生と違うな」
純くんはボソッと呟いた。
純くんが知ってる女子高生って、友達?それとも彼女さんかな?
きっとオシャレで綺麗だよね…
そんな私の思いを他所に、純くんは更に私に近付いた。
「あ、あの…」
「友杏ちゃん、何かいい匂いする」
「え?」
私は目を丸くした。
「香水付けてる?」
「ううん」
「ふーん…」
純くんはニッと笑顔になった。
!?
私は急に笑い掛けられてドキッとなった。
「じゃ、俺はこれで」
純くんは口笛を吹いて部屋を出た。
な、何か純くん心臓に悪い。イケメンだし破壊力あるよ。でも感じは寧ろいいのかも…私なんて向こうからしてみれば単なる居候だろうから、もっと邪険にされてもおかしくないよね。
私は少しホッとしたのだった。
下に戻り、沢渡さんとこれからの暮らしについての話をした。
沢渡さんは下村さんの紹介もしてくれた。下村さんはやはり家政婦さんで、毎日通いでみえて掃除、洗濯は勿論、食事も用意してくださるそうだ。
また、聖歌大学はここから電車で三十分ぐらいの距離だと言われた。
そんな話をしていたらすぐに夕食になった。
夕食は洋食だった。春野菜のサラダ、ポタージュスープ、スズキのムニエル、パンとレストランでの食事のようだった。
そこでは純くんは殆ど話さなかった。でも食べ方は綺麗で、やっぱり育ちがいいのかなと思った。
夕食が終わり、所長さんを見送ることになった。首都は遠いので事前にホテルを沢渡さんが手配してくれていた。
所長さんは深々と頭を下げた。
「くれぐれも友杏ちゃんをよろしくお願いします」
「任せてください」
沢渡さんも頭を下げた。
私は門の外まで付いていった。
「所長さん、これまでありがとうございました」
所長さんはじっと私を見つめた。
「友杏ちゃん、私一つ気になってることがあるの」
気になってること…何だろう?
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