恩人の息子

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「そんな大した物は作れないけど」 「じゃあパンで」 「わかった。純くん何時に起きるの?」 「春休みだけど明日は部活があるから、えっと…なら七時には起きるよ」 「じゃあそれまでには用意するね」 「友杏ちゃんって、えらいな」 「え?」 「自分で朝ご飯作ってたってさ。俺と歳、一つしか違わないだろ?」 「お母さん、仕事だったしね」 「俺は、家事に関しては下村さんが全部やってくれるから。何にもしてねえよ」 「下村さんは家事のエキスパートっぽいもんね。キッチンもすごく綺麗」 「そうだな。俺は不自由したことはねえな」 「おじさんって朝は召し上がるかな?」 「あれば食べるんじゃね?」 「じゃあ用意しようかな」 「ありがとう」  純くんは嬉しそうな声色だった。  その後浴室に案内してもらった。広い洗面所には私の歯磨きセットが既に用意されてあった。 「ドライヤーとかは自由に使っていいから」 「ありがとう」 「わからないことがあったら遠慮なく聞けよ」 「うん」 「お休み」純くんは微笑んだ。 「お休みなさい」  純くんは部屋に戻って行った。  シャワーを浴びた後、部屋で寝る支度をした。  純くんっておじさんは何考えてるかわからないところがあるとか、人見知りだとか言ってたけど、寧ろ親切じゃないかな。  いい子そうで良かった。明日は約束したし、ちゃんと朝ご飯を作らなきゃね。  私は明日に向けて気合いをいれたのだった。
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