思わぬ申し出

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 私は沢渡さんの言葉に茫然となった。 「沢渡さんの家にですか?」 「ああ。ところで指定校推薦の大学はどこに決まっていたんだ?」 「公立の大学です」 「そうか。その実力ならうちの上の大学もAO入試で合格できるだろう」 「AO入試?」 「総合型選抜入試のことでね、試験ではなく高校の成績、面接、小論文で選抜される。君なら間違いなく合格だ」 「それは、友杏ちゃんは大学に通えるという話ですか?」 「聖歌大学なら、私も色々と便宜を図れるよ」 「母は、今、私の通っている高校も母校の系列だと言ってました」 「そうなのか?どこの高校だ?」 「菊香(きくか)高校です」 「確かに姉妹校だ…そうか、絵理子はそれもあってここの土地に身を寄せていたのか…」 「その大学は女子大なんですか?」 「そうだね。菊香高校もそうだろう?聖歌学園も女子高だ」  女子大…女子だけの環境にはすっかり慣れたけど… 「でも、私には大学に通う余裕はありません」 「金銭的なことか?聖歌大学は返済不要の奨学金制度もある。ただ優秀でないといけないが、公立に指定校推薦で入れる実力なら恐らくその制度に該当できると思うよ。 この制度はどこの大学にもあるわけじゃないからね。普通、奨学金は返済義務が付いてくるからな」  その通りだ。だから私は大学進学を諦めたのだった。 「友杏ちゃん、有り難い申し出よ。大学生になれるのよ」 「どうして沢渡さんは初めて会った私にこんなに親切にしてくれるんですか?」  沢渡さんは私の顔をじっと見た。
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