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「罪滅ぼしかな」
沢渡さんは自嘲的な笑みを浮かべた。
「罪滅ぼし…」
「僕はお母さんが一番困っている時に傍にいれなかった。やっと力になれるのかと思ったらこんなことになってしまっていた。だから娘さんである君の力になりたいんだ」
私は隣に座っている所長さんと目が合った。
恐らく所長さんも同じことを考えているのだろう。
沢渡さんはきっと昔お母さんのことが…
「あの、沢渡さん、ご家族はいらっしゃるんですか?」
所長さんが聞いた。
「ああ、私は恥ずかしながら離婚してましてね。一人息子と一緒に住んでいます」
「お幾つなんです?」
「高二ですね。私立の男子校に通っています」
「住むとなったらそこへ友杏ちゃんも同居となるんですよね」
「そうですね。部屋は客室を使えばいいし、基本家事は家政婦さんがやってくれるからそこは気兼ねしなくていいよ」
沢渡さんは後半は私に向けて伝えた。
客室に家政婦さん…大きい家なのかな。それもそうか、学園の副理事長をやってみえる方だものね。
見ると所長さんも目を丸くして質問を続けた。
「あの、息子さんはどんな感じのお子さんなんですか?」
「ああ…少し何を考えているかわからないところがあるけれど、まあ普通の高校生かな。でも人見知りだし、打ち解けるには時間が掛かるかもしれない。勿論君のことは僕から話しておくから」
そうよね。高校生でいきなり見知らぬ女性が同居したら戸惑うのも無理はないか…
「それで大丈夫ですか?」
所長さんも心配そうに聞いた。
「基本、あの子は僕に無関心なんだ。家にいる時は自室に閉じこもってることが多いし。大丈夫だと思うよ」
沢渡さんは苦笑いを浮かべた。
「友杏ちゃん、どうする?私はこの話を受けてもいいと思うのだけど…」
所長さんが私の顔を見た。
「返事は今すぐじゃなくてもいいよ」
沢渡さんは優しく言った。
どうしよう…
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