新天地へ

2/4
前へ
/309ページ
次へ
 玄関口で沢渡さんを見送ることになった。 「詳しい話はまた首都に戻ってから連絡するからね」  沢渡さんには所長さんの仕事用のスマホの連絡先を伝えておいた。 「はい」 「じゃあ、それまで何とか元気でいるんだよ」  沢渡さんは心配そうに言った。 「はい、ありがとうございました」 「沢渡さん、友杏ちゃんをくれぐれもよろしくお願いします」所長さんは頭を下げた。私も慌てて後に続いた。 「勿論です。任せてください」  沢渡さんは一瞬眩しそうに私を見つめた。  沢渡さん?  しかし沢渡さんはそれ以上は何も言わず帰って行った。  玄関のドアが閉まると、私と所長さんはお互いにふうっとため息を付いた。 「ああは言ったけど、沢渡さんが言ってることが真実か確かめないとね」  所長さんはダイニングテーブルの椅子に座り沢渡さんの名刺を見て、スマホで検索しだした。 「……聖歌学園は確かに首都にある高校ね。えっと職員については…あ、あった、顔写真が載っているわ」  所長さんはスマホの画面を私に見せた。確かに沢渡さんの写真が掲載されていた。 「『副理事長 沢渡慶春』って書いてある。嘘を言っていた訳ではなさそうね。そうよね。あちらも私たちが検索することぐらい分かっているわよね」 「じゃあ、沢渡さんの申し出は本気にしていいのですかね」 「そうね。ただ、話がうますぎるわね。私も友杏ちゃんが大学に行けると聞いて舞い上がってしまったし、これからは慎重にいきましょう。 というか、友杏ちゃんは今の話が本当だったとして、沢渡さんの家に身を寄せる覚悟はあるの?」  所長さんはじっと私を見つめた。
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加