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玄関口で沢渡さんを見送ることになった。
「詳しい話はまた首都に戻ってから連絡するからね」
沢渡さんには所長さんの仕事用のスマホの連絡先を伝えておいた。
「はい」
「じゃあ、それまで何とか元気でいるんだよ」
沢渡さんは心配そうに言った。
「はい、ありがとうございました」
「沢渡さん、友杏ちゃんをくれぐれもよろしくお願いします」所長さんは頭を下げた。私も慌てて後に続いた。
「勿論です。任せてください」
沢渡さんは一瞬眩しそうに私を見つめた。
沢渡さん?
しかし沢渡さんはそれ以上は何も言わず帰って行った。
玄関のドアが閉まると、私と所長さんはお互いにふうっとため息を付いた。
「ああは言ったけど、沢渡さんが言ってることが真実か確かめないとね」
所長さんはダイニングテーブルの椅子に座り沢渡さんの名刺を見て、スマホで検索しだした。
「……聖歌学園は確かに首都にある高校ね。えっと職員については…あ、あった、顔写真が載っているわ」
所長さんはスマホの画面を私に見せた。確かに沢渡さんの写真が掲載されていた。
「『副理事長 沢渡慶春』って書いてある。嘘を言っていた訳ではなさそうね。そうよね。あちらも私たちが検索することぐらい分かっているわよね」
「じゃあ、沢渡さんの申し出は本気にしていいのですかね」
「そうね。ただ、話がうますぎるわね。私も友杏ちゃんが大学に行けると聞いて舞い上がってしまったし、これからは慎重にいきましょう。
というか、友杏ちゃんは今の話が本当だったとして、沢渡さんの家に身を寄せる覚悟はあるの?」
所長さんはじっと私を見つめた。
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