王子は美青年の諍いを享受する

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   決してシリウスとの仲は悪くないはずなのに、どういう訳かカノープスは誕生日前日までにその贈り物を用意していなかったようで、このままではうっすらとした記述のみであっても、ゲームの流れから逸れてしまいそうな気配を感じたため、朝食後、挨拶に現れたエンケラドゥスとアルデバランへ 『明日の、兄上へ贈るものについてなんだけれど…』  と話しかけ、何か用意していた形跡はないかと探りを入れてみたのだが、二人の反応は 『はい』 『それが?』  と、期待していたような反応を、示して貰えず。  そこで仕方なく、 『用意し損ねたから、街に行きたい』  と、言わざるを得なかったのだが。 (仕方ない)  もっと具体的に話さない限りは、この二人を納得させられないと悟ったカノープスは背筋を正すと、胸を張って声を発した。 「兄上へ、贈り物をしたいんだ。…心を込めて」 .
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