連絡

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連絡

そして僕はつい、ポツリと余計な一言を付け加えてしまった。 「先生、あんなことだめですよ。その先を期待してしまう人もいるんだから」 「期待って……」 高西先生が僕の言葉を返した時、ハッとした。これじゃあ僕は期待していたと言っているようなものじゃないか!僕は慌てて、話を逸らす。先生も、それ以上言及しなかった。 そして翌日から、高西先生のメールは途絶えてしまったんだ。 高西先生の予定からすると、即売会は近々ないし商業の新刊の予定もないはず。だから『修羅場に突入しているからメールが来ない』のではないみたい。そうなるともう高西先生が僕を避けているとしか、考えられたくなってきた。 きっと、気がついたんだろう。僕が先生に対して恋愛感感情を抱いていることに。そしてそれは迷惑……気持ち悪いと思ったはずだ。僕だってなぜ同性に惹かれたのか分からない。あんなにたくさんBLを読んできたけれど、実際に自分がそうなるとどうすればいいか右往左往するばかりだ。だけどどうしようもない。だって実るはずなんてないんだから。 僕は小皿に置いているブロッソのネックレスを手に取る。高西先生の笑顔を思い出して、思わず目が潤んできてしまう。恋愛感情なんて持たなければこれからも読者でいられたのに。毎日必ず読んでいた高西先生の作品はもう読めなくなり、その他の先生の本も読めない。どうしても胸が苦しくなるんだ。 連絡が途絶えて数週間。僕は腑抜けになっていて、仕事にも影響が出てしまった。大きなミスこそないものの小さなミスが重なっている。課長に長々と怒られたあとに、隣の席の藤田がコソッと大丈夫かと心配して聞いてきた。 「うん……でも自分のせいだから」 「榎浪、最近眠れてる? 酷いクマができてる」  それはさっき、課長にも言われてしまった。ああ社会人として良くないよな。仕事まで影響が出ちゃうなんて。 「今日は早めに寝るよ」 「そうしろ。榎浪が元気ないとつまんないし」 「はは、ありがとう」
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