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売り子デビュー
それから三か月後。今日はいよいよ高西先生のサークルのお手伝いをする日だ。参加するのはオリジナルオンリーの同人誌即売会でわりと集客が多い。BLオンリーの即売会ではないけれど、参加するBLサークル数は多く高西先生のサークル【カンロアメ】は今回も壁の配置になっていた。
「おはようございます」
待ち合わせしていた駅で顔を合わせたのは、高西先生と売り子の柴崎さん。いつもなら高西先生のスペースには売り子さんは三人いる。BLオンリーイベントではないにしろ、この二人で本を売るのは難しいとのことで僕に白羽の矢が立ったというわけだ。
高西先生は僕と柴崎さんを交互に紹介する。柴崎さんは背が高く、キリッとした女性。はじめまして、のはずなのだがお互い顔は覚えていた。何せ半年ごとに顔を合わせているんだから。
他愛のない話をしているうちに会場に到着し、サークル受付をすませスペースに行く。
高西先生と柴崎さんは段取り良く設営をはじめていたが、僕は勝手が分からず二人の様子を眺めていた。ふーん、こうやって設営されてスペースが出来上がるのかあ。サークル受付から開場まで二時間くらいあるから楽勝と思ってたけど、色々やることがあるんだなあ。
「陸くん、悪いけどこの本並べてくれる?」
「ポスター貼ってもらえますか?」
「段ボール取ってきてくれないかなあ」
……ええと、高西先生も柴崎さんも割と人使い荒い? そう思いながらも頼られるのが嬉しくて、僕はハイハイと動いた。
設営後は売り子のレクチャーをしてもらい、開場を待ち、いざ開場となったのだけど……途切れないお客さん、伸びる列。会計もすぐ計算しなきゃいけないし、渡し忘れのないようにしないといけない。
しかも、高西先生は基本的にお客さんと話するのが中心だから販売は僕と柴崎さんで捌かないといけないのだ!
BLオンリーの同人誌即売会ではないのに、この忙しさなんだから、僕が言っている秋春の即売会はどんだけ大変なんだろう……売り子さんってマジ大変!
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