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「塩見恵梨香さんの殺害容疑です。よろしいですね?」
「ちょっ、ちょっと待って下さい。塩見って、あの?」
わたしは頭を殴られたような衝撃を受けた。塩見恵梨香はわたしの同僚。二週間前に急に出勤しなくなって、今も行方不明となっているのだ。殺人容疑と聞こえたが、まさかわたしが彼女を殺したとでもいうのだろうか。
わたしが呆然としていると、彼は隣にいる女刑事さんに合図を送った。
「とにかく話は署で伺いますので」
「待って下さい、わたしにはなんのことだか」
一体何が起こっているのかわからない。またしても災難が勝手にやってきた。しかも今度は殺人容疑だという。確かに彼女はわたしに陰湿な嫌がらせをしてきたが、殺してしまうなんてあり得ない。そんな事をしたら、わたしの方が悪くなってしまうではないか。
こんな時こそ、冷静にならなければ。わたしに非はないのだから、堂々としていればいい。災難が過ぎ去ったら、綺麗さっぱり忘れてしまえばいいのだ。
わたしは刑事さんの立会の元に着替えだけさせてもらって、部屋を後にした。
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