願い

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夜道をふらふらと歩く俺を切れた街灯が見つめていた。 お腹が空いた。空腹が酷かった。 俺の右手には手のひらサイズの小さな瓶。 その小瓶はもう空で、もう持っている意味はない。 ぐしゃり。 俺が地面に倒れる音。 遠くで誰かが叫んでいた気がする。でも俺の意識はそこで途絶えた。 真っ白な天井に真っ白な壁。 黒い掛け布団と黒いシーツ。そこに乗っかる白い枕。 そしてそこに寝転がる俺。 今の状況が理解できなくて、俺は飛び起きた。 周りを見渡すと、知らない光景が目に入ってくる。 「どこ、だよ………、こ、こ………」 そう呟いても、誰も答えてはくれない。 すると誰かの足音が聞こえた。それはこっちに近づいてくる。 俺が左にある木製の扉を凝視していると。 がちゃり。 扉が開き現れたのは、ミディアムヘアの女性。 「っ!お、起きたんですか!?お元気そうですね。よかったです」 彼女は元気そうにする俺の様子を見て安堵したようだった。 恐らく彼女が倒れた俺を助けてくれたんだろう。 「あなたが助けてくださったんですね。ありがとうございます」 「いいえ。あ、申し遅れました、私、冴木(さえき)美羽(みう)というものです。よろしくお願いします」 「さえき、みう?」 聞き覚えのある名前に首を傾げる。そしてハッとした。 冴木(さえき)美羽(みう)。たしか、高校生の時の同級生だったはず。 が、向こうはピンとこないのかはてなマークを浮かべていた。 「そうですけど………」 「もしかしてだけど、優羽(ゆう)と双子の?」 「え、なんで知って………」 「俺は佐江宮(さえみや)(れん)だよ。高校生の時のクラスメイト。覚えてない?」 「(れん)………?あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!」 密室で叫ばれるの、結構迷惑だな。 耳を塞ぎ、呆れながらそう思った俺だった。
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