2、真面目魔族は隠し事が出来ない

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2、真面目魔族は隠し事が出来ない

森を無事抜け出し、今夜の宿を求めて訪れた村は、石で有名な観光地であった。 天然石から宝石、魔法石。 願い事や欲しい能力、財力の誇示などを目的に観光客が多い。 石との相性を鑑定してくれる占い師も居る。 ライとシオンは、宿の予約を終え、村を見て回っていた。 「一部屋でも空いてる部屋が残ってて良かったな」 「・・・そうね」 観光地だけあって、どの宿も部屋は満室。 何軒目かの宿で、格安小部屋をなんとか確保する事が出来た。 分かり易く、シオンの表情は不服げだ。 「抱き枕になるって約束、忘れてないよな?」 ライは、にた~と不適な笑みを浮かべ、揶揄い口調で尋ねるも、シオンは無言で一睨みするだけだった。 「女将さんには、布団は一組でいいって伝えておいたから」 「ちょっ、変な勘違いされちゃうじゃない!?」 「使わないのに用意させるのは宿の方に申し訳ないからな~。なんなら、抱き枕要因だけでなく、勘違いじゃなくさせても俺は良いんだけどな?」 横に居るシオンの腰を引き寄せ、己の懐へと抱え込む。 ライは眼前にあるシオンの顎を掬いあげ、女性受けするクールな笑顔を携える。 「揶揄うな!!私には敬愛する尊といお方が居る!他を当たれ、破廉恥剣士っ」 シオンは拳に魔力を溜め殴ろうとした時・・・。 強盗よ!誰か捕まえて!!と女性の声が響いた。 ライに遊ばれている場合ではない。 シオンは魔王直下警備隊として、すぐさまお仕事モードの顔付きに変わる。 魔力を込めた拳をそのままに、ライから押し離れ、声が鳴った方へと体を向き直す。 刀と袋を持った男二人が、ちょうどこちらに向かって走ってくる。 気配を察するに、魔族と人間の二人組だ。 「たく、欲しいもんあったら、働けっての。悪いシオン、ここは俺に良いカッコさせて。その拳の使い所は、今回はナシって事で」 殆どの観光客達は、端っこに避けたり、他の店に避難する中、堂々と道のど真ん中に居座るライとシオン。 通行の邪魔だったのだろう。 強盗の二人組は、脅しなのか本気で殺傷目的なのか、乱暴に刀を振り回し始め「どけ」と叫ぶ。 ライも、やれやれと思いながら、腰の刀に手を掛ける。 勝負は一瞬で付いた。 鞘のまま、ライは男達の脛を殴打した。 男達は刀も袋も手放し、脛を押え、情けない声を出しながら地面に転がっている。 袋から溢れるは、綺麗な輝きを放つ色取り取りの石。 「はぁ、はぁ、あの、ありがとうございます」 走り寄って来た女性が、息を切らしながら礼を述べる。 女性は相当怖い思いをしたのだろう、小刻みに震えていた。 ライは溢れた石も袋に戻し入れ、女性に袋を渡す。 袋を受け取り胸に抱えると、女性は安心したかの様に息を落とした。 「うちの商品なんです、良かった、取り戻せて。本当に、ありがとうございます」 「災難だったね。君に怪我はない?」 「はい」 「それは何より」 怖さも吹き飛ぶ、優しい声色で女性と話すライ。 頑張ったね、と言う様に女性の髪を撫でた。 女性の頬に朱色がさす。 「この強盗組どうするかな。人間の方は役人が来てすぐ処置してくれるだろうが、魔族の方はな」 「そっちは私が対応するわ」 シオンは指笛を鳴らす。 すると檸檬色の魔鳥が空から舞い降り、シオンの肩に止まった。 魔鳥は嬉しそうに、シオンに頬擦りしている。 「そいつ、シオンの鳥か?」 「えぇ」 「その鳥って、魔王直下警備隊の社員が相棒として従える鳥だよな?」 「そうね」 「ま、なんとなくそんな気はしてたけどな」 シオンは魔族の強盗犯を縄でぐるぐる巻きに縛り上げると、縄の先を魔鳥に咥えさせる。 魔鳥は大きく翼を広げ、再び強盗犯を連れ空へと飛び立つ。 その際も、強盗犯の男は情けない声を上げていた。 「小さい鳥の癖に、よく運べるな。重力的に不可能だよな、普通」 「警備隊で訓練されてる鳥よ、鍛え方が違うわ」 「鍛え方の問題か?魔物の鳥に理屈を求めても仕方ないか」 人間の方の強盗も、役人がすぐに駆けつけてくれ、連行されていった。 「あの、改めてありがとうございます。何かお礼をさせて頂けませんか?宜しければなのですが、美味しい酒場を知ってるんです、そこで是非お礼を」 お礼と言うよりも、別の目的が隠れていそうなお誘いだ。 男女で酒を交わす約束をする、それは夜の営みの誘いも意味している。 「私、一人で寄りたい店あるから、じゃぁね剣士様」 はい、いいえ。 お返事はお好きにどうぞ、とばかりにシオンは来た道を戻っていく。 .
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