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最開
目を覚ますと、水辺に誰かがいた。
「大丈夫?」
大丈夫、と答えようとするけど、声が出ない、目も、よく眠っていたからだろうか、光を受け入れるのに時間がかかる。
「まさか、春夏が、ここに来るなんて、びっくりしちゃった。」
だんだん目が光を受け入れてくる、脳が回ってくる。
は?
今、春夏って言ったか、なんで、こんな所で?
いや、まず、
「ここはどこで、あんたは誰だ?」
「そうだよね、そこから説明しないと、
久しぶり、春夏、留先恵留だよ。」
恵留、恵留なのか、本当に?
そう聞きたかったが声が出ない。
「あ、そっか、まだ人間だもんね、
春夏この水を飲んで」
恵留はそう言って、湖を指さし、手で汲んで飲ませてくれた。
水が喉を通る
「恵留!」
声が出た、
「恵留!恵留、恵留なのか?本当に?
本当に、」
「そうだよ、春夏、恵留
出来れば生きて会いたかったなぁ、」
は?
「は?、お前なんて、生きてって、死んでるってことか?、じゃあなんでなんで、僕は水を飲ませて貰えたんだよ、」
「色々あるんだよ、こっちも、
多分、話せるのも、もう最後」
「なんで、なんで、せっかく会えたのに、
せっかく、
町中探して、全部探して、やっと会えたって言うのに、もう最後って、それは、それは。」
僕がそう言うと彼女は、ふつふつと
「私だって、私だって、私だって、本当は春夏といたかった、ずっと春夏といたかった。でも仕方ないじゃん。
お母さんが、泣きながら言ってきたの、朱子に選ばれたって、嫌だけど、私が死なないと、春夏が死んじゃうかもしれない。
私が死なないと、町中が酷いことになるかもしれない。」
彼女は、嗚咽とともに本心を吐き出した。
「それだけは、嫌だったんだよ。」
それは悲痛というのもいたたまれるほど、悲しい告白だった
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