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去年の夏
絶対に秘密だよ?
それが彼女からの言葉だった。
うん、わかった。それじゃあ
それが僕が贈ったことばだった。
7月14日ジメジメと暑い日だった。
「今日の授業ダルくなぁーい?」
汗ばんだシャツをハタハタさせながら彼女は言った。
「別に、恵留が弱いだけじゃないの?」
「はあ?そんなことないし。」
留先恵留(とめさきめぐる)それが彼女の名前だった。
「春夏だって、冬は寒い寒い言ってし」
咲夢春夏(さきゆめはるか)これが僕の名前だった。
「うるせぇ、」
「あっ!逃げたー、ずるー、春夏のする虫ー」
「無視すんぞ」
「それはちょっと」
はぁ、全く、我ながら、頭が悪い会話だと言うことは理解している。
恵留とは幼なじみで、いつもこんな会話を繰り広げている。
「あ、そうだ、春夏」
「なんだよ、恵留」
「アタシ、引っ越すことになったわ」
それから僕が何を発したか、何を口走ったか、何も覚えてなかった。ただ、嫌、だった。
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