After -以後-

8/10
前へ
/34ページ
次へ
行人はいつものように笑っている。 この先の運命も知らずに笑っている。 頭上の数字は " 1 " だ。 明日、行人がいない世界がある。 その世界で僕はどうやって生きるんだろう。 絶望の中でもがいているだろうか。 いつものファストフード店で今日も過ごしていた。 「きざし、聞いて。この前さー。」 行人の声も顔も存在も消えてしまうなんて。 嫌だ。 行人を失いたくない。 僕に必要なんだ。 「てわけよ」 話がひと段落落ち着いて、顔を上げる。 四秒後には " 1 " が出てくる。 そして、言う。 自然に。淡々と。 「明日、君が死ぬんだって」 信じたくないのか、他人事のように言ってしまう。 下を向いて、拳を握る。 せめて、この言葉を戒めにしてくれるなら。 「そうなんだ」 行人はアッサリ答えた。 僕は行人の顔を見る。 何か悟ったような哀愁漂う顔に、目が離せなかった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加