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翌日、兆はいつもより早く来ていた。
腕時計は帰り際に渡そうと思っていた。
兆が昨日言った『死』は全く来ない。
冗談もたまには言うんだなぁと思った。
油断していた。
兆と出会った一番目の世界と同じ。
ああ、走っても無理だ。
だって、すぐそこなんだ。
諦めが身体中を浸透する。
腕時計、渡したかったな。
目を閉じて、最期に兆に叫ぼうとした瞬間、
誰かが体当たりしてくる。
でも、車に当たるあの痛みはない。
目の前を見た。
兆が倒れていた。
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