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それなのに、兆は亡くなって、俺は生きて。
意味わかんなくて、自殺した。
けど、戻ってくるのは事故のあとで。
わけわかんなくて、兆のことを思い出すたびに死んで戻ろうとした。
けど、ダメで。
次第に心が枯れてきて、
一周回って、もう、どうしようもなく、
兆を消した。
いたという証を、いたという記憶を。
林間学校や修学旅行のものはもうない。
兆と飛ばして遊んだ紙飛行機も、
どれだけ大きく作れるか競った消しカスも。
もうこの世にはない。
ネックウォーマーも手袋も捨てた。
兆がくれたものだった。
返せなかったマンガやノートは遺族に託した。
連絡先や写真も一つ残らず消した。
俺の部屋は寂しくなった。
その様を見て、涙が溢れてくる。
どうしても、兆の笑顔や瞳がチラつく。
全部消した。消したんだ。
なのに……。
「母さん、これ、預かってくれない?」
あの日、あげたかった腕時計。
それは兆からの贈り物でも、兆の所有物でもない。
手元に置いておくのはイヤで、母さんに預けた。
これで、全部、のはずなのに……。
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