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ソノちゃんは、戦ってきたのだ。
そうして手に入れた姿はあのころよりもずっとずっと逞しくて、爪を見なければ私は彼がソノちゃんだと気づかなかっただろう。
「うちのサロン、けっこう男性客も来てるからさ。恥ずかしがらないで、これからも来てよ」
「はい。あ、シゲくん連れてきましょうか」
「いや、それはいい」
ばっさり断ると、ソノちゃんはまた笑った。シゲとはたまに連絡をとっているのだという。
いまの姿で会ったときの第一声が、「おー、かっこいいじゃん。いい男じゃん。俺のつぎに」だったと聞いて、はじめての彼氏がシゲでよかったな、と私は思った。たぶん、いや、間違いなくソノちゃんの方がかっこいいけれど。
「外、もう暗いし寒いから、帰り道は気をつけてね」
私はエレベーターの前でそう言ってから、あれ? これは女の子にかける言葉かな? いや、男性客相手にだってこう言ってるから、おかしくはないよね? とぐるぐる考えた。
考えていることが顔に出ていたのか、ソノちゃんはぷっと噴き出してから、ありがとうございます、と頭を下げた。その姿勢のうつくしさは、あのころと変わっていなかった。
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