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テストが終わった後も優作は私に勉強を教えてくれるよう頼んできました。私は「うん、いいよ」と言いました。また私の中に暖かさが充満しました。
日々は淡々と過ぎていきました。
そんな日々の中で、少しずつ、しかし確実に、ーそれはまるで雪が溶けていくかのようにー、私たちは互いに打ち解け、寄り添うようになっていました。
クラスで二人ぼっちな私たち。
私たちは二人だけの世界で時を刻みました。その世界には他に誰もいません。そこでは、勉強の教え合いをしたり、趣味を語り合ったり、ときには無言のまま互いに見つめ合ったりして時間が過ぎていきました。
孤独な世界で、私たちは互いに愛おしく感じるようになっていきました。
*
*
そんなある日、彼が言いました。
「絵梨、聞いてくれ」
「何?」
「君のことが好きです」
*
ふっと体が軽くなりました。
「ありがとう」と私は言いました。
「俺と付き合ってください」と彼は言いました。
必死に心臓の高鳴りに抗い、私は震える声でこう言いました。
「ごめんなさい」
彼は薄く笑った後、言いました。
「そっか…」
私はどうにかなってしまいそうでした。なんで…。なんで…。私は…。
私は大海で溺れかけていました。助けて。必死で叫ぶも、声は泡となり、彼の耳に届くことはありません。
…私は身体が張り裂けそうでした。指も、足も、喉も、目も、心臓も、何もかもが裂けてしまいそうでした。
*
*
*
何度想像したことか。何度願ったことか。
私は小さな世界のことを願いました。
私は、彼と付き合い、やがては結婚し、やがては家庭を持つことを想像しました。そこは暖かな未来です。そこは太陽が私たちを照らす未来です。
しかし、それは決して叶わぬ未来なのです。
彼を愛してはならない。だから私は夢という紙を破り捨てました。そして現実を見るように努力しました。
雲間から一瞬さした太陽の光を自らの手で拒みました。私が太陽を望めば、太陽は自らの炎で燃え尽きてしまう。私は雲を体に纏い、太陽を完全にシャットアウトしました。
そして私は彼に知っておいてほしいと思い、語る決心をしました。
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