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帰り道、夕日が私たちを照らしていました。 しばらくは互いに無言でいました。 やがて、彼は私の手をそっと握りました。 彼の手は少し震えていました。それを悟らせまいと彼はまた笑顔を私に向けました。そして、彼は死に怯えながらも、私の手を掴んで離しませんでした。 私の頬に一雫の雨が流れました。 「優作」と、私は彼に言いました。 「ん?」 「この手を離さないで」 彼はまっすぐ先を見据えたまま、震える声で誓いました。 「ああ」 夕日は燃えるように輝いていました。 誰もいない小さな世界で私たちは同じ波長を感じ、同じ愛を感じていました。 そしてその時、私は心の底から彼を愛しました。 あなたを愛しています…。 そして私はもう一度、この手を離さないでと祈りました。 * * *
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