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週明けになって登校すると、草平が失踪したとの話を聞いた。
「草平が行方不明?」
あれから廃団地で何か起きたのだろうか。
「木平はどうなった?」
気になって羽沙に聞いてみたが、千里が出てこない限り、「何の話?」と、話が通じない。
千里を出してくれと喉元まで出かかったが、諦めた。
千里によると、自分の意志では出ないとの話だったからだ。どうも、羽沙が窮地に陥った時に意識が入れ替わるらしい。
早川合美は、精神的ダメージが大きかったのか、あれから全く登校しなくなった。
草平と学校で顔を合せるのが怖いと言っていたから、登校できなくなったのだろう。
一度、家まで行ってみたが、インターフォンを押す勇気が出なかった。
何かあれば向こうから言ってくるだろうし、自分の存在が忘れたい記憶を呼び覚ましてしまうかもしれないと危惧したからだ。
星冬には、彼女の不安を取り除くことが出来なかった。
数日後、見つからない草平たちの行方が気になった星冬は、再び廃団地に足を踏み入れた。
「おーい、草平ー、木平ー」
名前を連呼して隅々まで探し回った。
ギロチン台にも誰もいなかった。
階段を上っていると、2階と3階の階段プレートが落ちそうになっていた。触って確かめると、簡単に取り外し可能であることに気付いた。
「これって外れるんだ。そうか! どこの階にいるか分からなくさせるために、プレートの数字を変えていたんだ!」
思った階に行けなくなったことや、どこの階にいるのか途中から分からなくなって混乱した。
階数表示のプレートを付け替えることで、自分が今何階にいるのか勘違いさせられたからだった。
必死に2階で詩衣那を捜していたつもりだったが、そこは3階だったのだ。だからギロチン台を見つけることが出来なかった。
これも、木平が仕掛けたトリックだったのだ。
廃団地内を隈なく捜したが、どこにも二人はいなかった。死体もなかった。
その後、早川合美は結局一度も登校しないまま、湊翔学園高校を退学。別の高校に入り直したと羽沙と詩衣那から聞いた。
2年後、涼真、星冬、詩衣那、季里乃、羽沙は、高校を卒業した。
いまだ、見つからない草平にも卒業証書は授与された。
5人は、彼の卒業証書とともに最後の記念撮影をした。
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