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中に入ると、途中まで解体工事がされたようで、各戸の玄関ドアが外されていた。そのため、どの部屋も出入り自由だった。
六人は、手前の部屋から順番に撮影していくことにした。
前の住民の荷物がそのまま残っていて、レトロな光景が広がっている部屋を見つけた。
「コーラ瓶に醤油瓶! 酒瓶! 味醂瓶まである!」
生まれた時からペットボトルに囲まれている高校生たちには、それらは逆に新鮮だった。
「みて、これ、モンチッチだよ! これも知っている! ダッコちゃんって言うの!」
「これなんて紙のメンコだ。野球盤もある!」
「昔の漫画本は、結構貴重品かも」
「黒電話だ!」
「どれも珍しくて、ついつい、興奮するよ」
「ある意味、お宝の山かもね」
部員たちは、まるで昭和時代にタイムスリップしたかのようで思わず興奮してはしゃいでいたら、涼真がガチギレした。
「浮かれすぎだ!」
全員、固まって動かなくなった。
「ここにあるものには一切触るな! 僕たちは泥棒じゃない!」
「分かっているって。細かいなあ」
星冬が顔をしかめた。
一通り撮影を済ませると、次の部屋に移動する。
他は何もない部屋がほとんどだったので、あっさり終わって2階に上がる。
「何も出てこないね」
「あとで映像をチェックすれば、何か映っているかもよ」
部屋の中を撮影していると、どこかで「ドン!」と、重い音がした。
「今、何か音がしなかった?」
「した。何かがぶつかったような、落ちたような」
一瞬だったので、誰にも分からない。
「音が動画に入っているかも」
スマホで確認する。
――「ドン!」
「聞き間違えじゃなかった。僕たち以外誰もいないのに」
「ラップ音ってやつ? 来たかいがあったね」
「音がした方に行って確認しようよ」
「幽霊だったらいいけどね。こんな廃墟に生きた人間がいたら、そっちの方が怖い」
「こんなところに人はこないだろ。いたとしたら、相当な物好きだ」
「私たちみたいな?」
「ああ、そうだ」
何があってもいいように、スマホで撮影しながら音がした方向に歩いた。
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