瑪瑙可南子の失せ物探し

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「編集部が用意してくれた部屋なんだ。私は隣の部屋を取るから、その部屋を可南子くんが使ったらどうかと思って」 「確かに……それなら悪くないですが」 「たまには2人して羽を伸ばそうじゃないか。どうだい」 「そうですね。いいかもしれないです。でも」 正直、面倒くさい。 そう続けようとした言葉を遮って、叔父様が言った。 「お食事がとても美味しいと評判の宿だ。季節の果物も盛り沢山だよ」 「行きます」 こうして私と叔父様は、一泊二日の箱根小旅行に出かけることとなった。 念のため断っておくが、果物に釣られたわけでは決してない。断じて、ない。 *** 私の名前は瑪瑙可南子。この春から大学生となる美少女だ。 歳は18。お肌も髪もツヤツヤのトゥルントゥルンである。 長く伸びた黒髪と大きく潤む瞳が自慢だ。 そこらのモデルや女優なら、間違いなく裸足で逃げ出すところだろう。 そんな私だが、数年前までは、山陰地方の片田舎でひっそりと暮らしていた。 決して快適とはいえないそこを離れ、都会に暮らすようになったのは数年前、叔父様が迎えに来てからだ。 叔父様というのは実父の弟で、名前を瑪瑙清隆という。
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