11人が本棚に入れています
本棚に追加
「編集部が用意してくれた部屋なんだ。私は隣の部屋を取るから、その部屋を可南子くんが使ったらどうかと思って」
「確かに……それなら悪くないですが」
「たまには2人して羽を伸ばそうじゃないか。どうだい」
「そうですね。いいかもしれないです。でも」
正直、面倒くさい。
そう続けようとした言葉を遮って、叔父様が言った。
「お食事がとても美味しいと評判の宿だ。季節の果物も盛り沢山だよ」
「行きます」
こうして私と叔父様は、一泊二日の箱根小旅行に出かけることとなった。
念のため断っておくが、果物に釣られたわけでは決してない。断じて、ない。
***
私の名前は瑪瑙可南子。この春から大学生となる美少女だ。
歳は18。お肌も髪もツヤツヤのトゥルントゥルンである。
長く伸びた黒髪と大きく潤む瞳が自慢だ。
そこらのモデルや女優なら、間違いなく裸足で逃げ出すところだろう。
そんな私だが、数年前までは、山陰地方の片田舎でひっそりと暮らしていた。
決して快適とはいえないそこを離れ、都会に暮らすようになったのは数年前、叔父様が迎えに来てからだ。
叔父様というのは実父の弟で、名前を瑪瑙清隆という。
最初のコメントを投稿しよう!