瑪瑙可南子の失せ物探し

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思わずため息も漏れてしまうというものだ。 あの後、見知らぬ青年から貴重品を受け取った私たちは、ロビーに戻った。 ちょうど、宿泊客が警察を呼ぶと言い出したタイミングだったらしい。 泥に塗れてしまってはいたが、腕時計やネックレスなどを渡すと、彼らは一様に驚いていた。 そこで、カラスの習性と対岸の巣作りについて説明し、万事解決。 今後はカラス対策を考えるという女将の発言を最後に、それぞれ部屋へと戻ったのだが。 『この度は、本当にありがとうございました』 私と叔父様は、女将に呼び止められ、再度頭を下げられた。 そして。 「たまらん。極楽か」 部屋の露天風呂に浸かりながら、こうして天を仰ぐ美少女がひとり。 本来なら午前中にチェックアウトの予定だったのだが、女将が気を利かせて、夕方まで時間の延長を提案してくれたのだ。 カラスの巣を探るために泥だらけになった私たちは、それをありがたく受けることにした。 さらに驚くことに、夕方までのんびりさせてもらおうと部屋に戻ると、山盛りのフルーツが届いていた。 私は早速準備を整えると、フルーツのカゴを持って露天風呂へと向かった。
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