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そう言いながら、叔父様は自分の旅行鞄を開け、荷物の整理を始めた。
「いえ、大丈夫です。若いので」
私だけ休むのは負けな気がして、私も私物を片付けることにした。
とはいえ、荷物などほとんどない。
あっという間に終わってしまった。
ふと見ると、叔父様は鞄を仕舞い、紙箱を開けている。
中から出てきたのは、繊細そうな硝子。3つ連なった球形の……あれは、花器だろうか。
私は、木製の台座に置かれた花器を、黙って見つめていた。
叔父様は、土産にと買ったのだろう。
いつの間に。
私も、何か買ってくるべきだっただろうか。
後悔しても、遅いのだが。
しかし、なんだか、悔しい気分だ。
「なんだい? そんなに睨まなくてもいいだろう」
叔父様に、気づかれた。
「べ、別に、睨んでません」
ぷい、とソファに埋もれた時、叔父様が微笑んだ気配を感じた。
ガサゴソと紙袋を開く音がして、足音が近づいてくる。
「お土産だよ。一緒に食べよう」
差し出されたのは、淡い色の紙に包まれた平たい箱だった。流れるような書体で、『温泉まんじゅう』と書いてある。
「おんせん、まんじゅう」
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