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馬鹿な子供のように、ただ音読してしまった。
「食べたこと、なかっただろう。なかなかイケるよ」
叔父様はソファの斜め向かいに座ると、包装紙を開き始めた。
ビリビリと破いたりせず、丁寧に糊をはがしていくのが、叔父様らしいと思う。
箱の中には、ビニールで真空パックされた茶色い饅頭が並んでいた。
「さあ、どうぞ」
ハサミでビニールを開け、プラスチックのトレイを取り出すと、叔父様はそれを私に差し出した。
ふわり、と、甘い、焦げたような香りがした。
「いただきます」
茶色い饅頭はとても小さく、一口で食べられてしまいそうだった。
けれど、敢えて、少しだけ齧る。
甘い生地はどことなく懐かしい味がした。
「うん、粒あんだね」
叔父様は、饅頭の眺めながら嬉しそう笑っている。
私も、手元の饅頭の断面を見た。
うむ、粒あんだ。
「普通は、違うんですか?」
「そうだね、こしあんの場合も多いかな」
「決まりはないんですか」
「温泉地で売っている蒸饅頭なら、それは温泉饅頭だね」
「適当なんですね」
食べ終わった包みを畳んで捨てた。
黒糖の香りが、なかなかに深い後味を感じさせる。
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