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◆◇◆◇◆
街道から自動運転車が事務所の駐車場に入ると、美里は荷物をもって玄関の前で待っていた。
充電ポイントに入ると美里は走って助手席に近づいてきた。
美里が窓から運転席を覗くと、係長はトグロを巻いて完全に眠っていた。
ドアを開け助手席に座りながら、不安そうな表情で係長を見る。そっと頭を撫でようとすると、係長がピクリと体を動かし美里は手を引っ込めた。
「ごめん、待たせたね」
「ううん。くろ大丈夫? 今日なんか変だよ。なんかとっても疲れてる」
前足で目をこすりながら、美里を見上げた。
心配そうに見つめる瞳が、宝石のように光が乱反射し美しい。
時折するまばたき、ほんの少し開いた唇から息を吸い込む音。
美里は、紛れもなく今生きている。
頭を起こし座り直すと、係長は微笑んだ。
「まだ弁当あるのかい?」
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