プロローグ~第一話 lost cats

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 最初は微笑ましくペットと会話する人々であった、が徐々に世界は大混乱に突入していった。  これまでも、物語には言葉を話す動物たちは沢山いたし、犬猫の翻訳玩具もあったにはあった。  だが実際に言葉を話し始めると事態は変わってくる。  権利の問題だ。  人類は自由に世界を開拓してきた。  誰の許可も得ず動物を狩り、食用に飼養し、森を燃やし、海を汚してきた。  動物たちに後ろめたいところを突かれれば反論が出来ないし、愛しい猫や犬と土地や食料の権利を巡って、争いができるほど人類はすでに野蛮ではなくなっていた。  平和に解決をするため、言葉を感知した動物たちに@スピーカをつけ、人類は時間をかけて対話を重ねた。  知能レベルの問題もあったが意外にも動物たちは人類の歴史を知った上で責めることはなかった。  人も自然の一部であり人の行動も摂理の中にある。罪や罰という考えには及ばないようだった。  ヒトはヒト。動物は動物ということだ。  どちらかというと言葉の拒否をする動物たちが多く犬は真っ先に@スピーカをはがした。  そんな中、猫だけが権利を主張した。  なぜか猫は他の動物と比べ格段に知能が高く、人の学問や社会・労働などを理解していた。猫たちが言うには、人の成長とは度合いが違い、猫は生まれてから成猫になる期間、脳の発達と学習能力が人の数倍なのだという。  現に、その成長期間に@スピーカを付けた猫は、人を超える速度で学習し知識を得て、大人さながらの理解力を発揮した。猫たちは、労働し金銭を得て、平和で自由に生きる人類の社会システムに興味を持ち、人と同じように生きたいと言い出したのだ。  その対応は国や地域によって異なるものになっているが、わが国では全面的に認めることになった。  今は2045年、団塊ジュニアが70代になる。少子化の影響で労働人口の問題は国の大命題だった。まさに猫の手も借りたい状況であったのだ。  法案はスルスルと通り、人権は『人猫権』という名称に変わり憲法も書き換えられた。 猫が働くためのツールも、次々に発明された。 かくして猫たちは数年の間に人と同じように働き、税金を払い、好きなものを食べ、好きに遊び、好きに生活するようになっていった。  これらは@スピーカが世に登場してから、たったの六年の出来事である。 劇的な変化が世界に起こったのだ。  この物語は、そんな世界の、誰も知らない未来のお話である。
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