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「啓介とは 大学が一緒だったのよ。」
華蓮さんは話し始めた。
啓介さんと、いつもカフェに一緒に来るお友達も 同じ大学だったらしい。
そして 啓介さんは、大学生の時 一つ歳上の彼女と付き合っていた。
「茉那さんは ゼミでも憧れの先輩だったわ。
頭が良くて とても活発で いつも目がキラキラしいた。
茉那さんの周りは いつも友達が集まっていて、ゼミの先生でさえも彼女に一目置いていたわ。
啓介とは とてもお似合いで 誰もが二人はそのまま結婚すると思っていたくらい。」
冷めきったコーヒーを飲んで 華蓮さんは続ける。
「でも、ひと足先に卒業した茉那さんは 海外勤務になり 遠距離恋愛になってしまったの。
そこからどうなったのかは 詳しくは知らないわ。
でも、茉那さんは その海外勤務先で 啓介とは別の人と結婚してしまったのよ。」
私は 黙って次の言葉を待つ。
「啓介ってさ、昔から ものすごくモテたのよね。
わかるでしょ?かっこいいだけでなく 優しいところもあるし…。
でも 彼女と別れてから 誰とも付き合わないのよね。
それだけ 特別な人だったんだと思う。
それに…… どうやら、いまだに茉那さんとは連絡取ってるらしいのよ。」
言いにくそうに華蓮さんは私を見る。
「どんな理由や内容で 連絡を取ってるのかは知らない。
でも、まだ二人は繋がりがあるのは確かなのよ。」
私は ただ頷いた。
華蓮さんが嘘を言っているようには思えないし、意地悪で こんな事を言っているようにも見えない。
全部本当のことなのだろう。
啓介さんの事を知りたいと言ったくせに 知らなければ良かったと思う自分自身に嫌気がした。
落ち込んでいる様子の私を見て
「……余計な事を話したかもしれないわね。」
華蓮さんは ぼそっと呟いた。
ファミレスを出ると、外はかなり冷え込んでいた。
星が綺麗にみえる。
人を好きになるって つらい。
嬉しいことも楽しいことも たくさんあるけれど
少しの不安で 一気に苦しくなる。
私は 啓介さんのことが好きなのだろう。
だって今 こんなに胸が痛いのだから。
啓介さんの 大きな手の感触を思い出して、涙が出た。
ただ、啓介さんの顔が見たかった。
声が聞きたかった。
最初は遠くから見つめてるだけだったのに いつの間にか こんなに私の心の中を占領している。
頬に当たる風が冷たい。
私は 急に寒さを感じ、マンションまでの道のりを急いだ。
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